日経MJ 2018年8月27日掲載

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神田昌典の「未来にモテるマーケティング」隔週月曜日掲載

日経MJ 2018年8月27日掲載

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中小企業、存在が「インパクト」――社会問題解決に不可欠

 企業の本格的成長は創業何年後から始まると、あなたは考えるだろうか。3年後、5年後、それとも10年後?
 私は「創業20年後から始まる」と考えている。一般的に、企業は創業からしばらくは成長するが、創業者の年齢が上がるにつれ衰退するのはやむを得ない、という雰囲気があるが、それは大きな勘違いだ。
 100円ショップ「ダイソー」は1972年に創業。創業20年の頃は直営店を出し始めたばかりで売り上げも小さかったが、今や海外26カ国で5千店を展開。売上高は4500億円に成長した。ソフトバンクも創業20年時は売上高4千億円程度で営業損益は240億円の赤字。その後、ビジネスモデルの大転換を果たし、今は売上高9兆円超、営業利益は1兆円超のグローバル企業へ成長した。
 他にも、米アップル、スターバックスをはじめ、創業20年を経てから本格的成長を果たしている企業は、数えだしたらキリがない。
 考えてみたら、理由は明らかだ。20年を細々とでも生きながらえた会社は、強みを生かせるビジネスモデルが明確になっている。社員も安定稼働しているので、小さくても事業の核と基盤が整っているのである。そこに未来を見据えたマーケティングとマネジメントシステムが加われば、継続的な成長が一気に実現できるようになる。
 こんな未来があるにもかかわらず、創業20年を超えた中小企業は、「これから本格的に成長する」という前向きな印象よりは、「これからどう事業を存続させていくのか」という後ろ向きな印象を持たれがちだ。
 そこで私はこうした消極的なイメージを転換すべく、中小企業を「インパクトカンパニー」と呼ぶべきだと提唱したい。
 中小企業は全法人数の99・7%、就労人口の70%を占め、社会的に大きなインパクトがあるセグメント。大手企業の華やかさや堅実さと比較すると採用にも苦労することが多いが、インパクトカンパニーというポジションを確立することで、市場に与える印象自体を変えてしまうのだ。
 インパクトという言葉は、最近では金融分野での「インパクト投資」が注目されている。経済的利益を確保しながら同時に、貧困や飢餓、差別、環境破壊といった社会的問題の解決を目指す投資手法だ。インパクトカンパニーも同じように、社会問題の解決に取り組むことを使命とする。
 グローバル市場では1強しか生き残れないが、ローカル市場なら顧客の近くにいることを生かし、人間らしい生きがいのある仕事を創出しながら、複数の会社が共存できる。そうした企業を、単に規模の大小で評価する「中小企業」という名前ではなく、社会的インパクトに直結するインパクトカンパニーと呼ぶことで、むしろその未来における本質を描き出せる。  ネーミングを変えるだけなので、お金は一切かからない。しかし、それだけで未来への成長を支える、社会貢献意欲のある人材が集まってくるのだから、あなたも自らの会社のイメージをインパクトへと変えてみてはいかがだろうか?