日経MJ 2018年7月30日掲載

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神田昌典の「未来にモテるマーケティング」隔週月曜日掲載

日経MJ 2018年7月30日掲載

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アマゾンプライムデー活況――地方の商品、世界市場も的

 7月16~17日、「アマゾンプライムデー」が日本を含む世界中で開催された。アマゾンプライムデーとは年1回おこなわれるプライム会員限定の大型セールのことだ。今年の売り上げはなんと1億点超。仮に平均単価が3千円としたら、2日で3千億円を売り切ったことになる。
 米アマゾン・ドット・コムが作り出した経済圏は巨大化する一方だ。アマゾンに詳しいマーケターのJason Fladlien氏によれば、米国人のうちパスポート保有者は46%、教会に行く人は51%に対し、アマゾンプライム会員はそれを上回る56%。米国のスマホの4台に3台はアマゾンアプリが入っているという。全世界での売上高も20兆円に迫り、企業というより、もはや小さな国家だ。
 巨大経済圏ができた結果、ビジネス環境が大きく変わった。魅力的なのは副業でも始められるぐらい簡単に、通販ビジネスができるということだ。
 かつて、通販事業に乗り出すには自らのホームページや決済システム、物流体制などが必要だった。今は中国のアリババ集団で仕入れ、プライベートブランド(PB)としてアマゾンの倉庫に一括納入すれば、拠点がなくても、世界で販売できるようになった。「アマゾンで何が、いくらで、どのぐらい売れているのか?」という正確なデータもあり、販売計画を立てるのも容易だ。
 広告でもアマゾンは検索エンジン広告に毎月約40億円を投じている。2位の米ウォルマートの13億円と比べ約3倍だ。これだけ広告を打ってくれれば、売りやすくなる。しかし、これだけ手軽に、世界を相手に物販ができるのに、まだアマゾンに参入していない日本企業は少なくない。
 日本の商品は依然、世界で高く評価されている。中国人の爆買いは落ち着いてきたように見えるが、そうではない。越境EC(電子商取引)に詳しい「トレンドExpress」の中澤吉尋氏によると、中国には日本で買い付け、「微信(ウィーチャット)」などソーシャルメディアで販売する「ソーシャルバイヤー」は45万人もいるという。
 私がひいきにしている郊外のメガネ店では、ソーシャルバイヤーとおぼしき中国人がここ2、3年、何人も来ていては日本製のメガネフレームをダース単位で購入する。しかし、外国人に売るのを任せず、自分で売るべきだ。
 特にチャンスなのは地域にしかないローカル商品を扱う企業だ。どこでも買えるものはいずれ価格競争になるが、そこでしか買えないユニークなものはその心配がない。シャッターを閉めようとしている地方の店にこそ宝の山はある。
 「アマゾンで売るのなんて一時しのぎ。すぐに飽きられ、売れなくなる」という人もいるが、目先の売り上げだけを求める話ではない。アマゾンを通じて世界で売れば、今後の世の中や市場を理解する突破口になり、結果としてより広大な市場を狙える。あなたならではの商品の開発にもつながるかもしれない。簡単に開けられる扉を開けず、大きなチャンスを永遠に失うほど惜しいことはない。