日経MJ 2018年7月2日掲載

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「ブロックチェーン」革命――信用が生む市場、続々と

 最近、仮想通貨の基幹技術として話題の「ブロックチェーン」。ネットワーク上のユーザーが同じ台帳を持つことで、極めてデータを改ざんをしにくくした技術で、中心で管理する機関なしに作れるのも特徴だ。仮想通貨だけの技術と思われがちだが、その社会的インパクトは計り知れない。
 一例が数百万人ものシリア難民が暮らすヨルダンのアズラック難民キャンプ。不安定な電力事情で携帯電話も満足に使えないようなキャンプだが、「すべての難民に食糧支援を平等に行きわたらせる」という難しい課題を解決しつつある。その原動力がブロックチェーンを使ったシステムだ。
 難民は網膜の情報を提供すると、特定の店で食糧を買えるクーポンが入った電子ウォレットがもらえる。店に行き、網膜をスキャンしてもらうと食糧が買える。この一連の流れはブロックチェーンで記録されていて、他者が改ざんできないので、食糧の横領や強奪などの心配がない。そのため難民一人ひとりに確実に物資が届くわけだ。
 しかも、記録の管理や店舗への支払いなどをおこなう中間業者が不要で、経費が何億円も節約できるという。このような仕組みはブロックチェーンがなければ絶対に成しえなかった。
 ブロックチェーンが革新的なのは「信用のベースを容易に作れる」点だ。かつて、信用のベースを生み出し、世の中に革命を起こしたのは、15世紀後半から広がった複式簿記だ。複式簿記で取引を正確に記録できるようになったことで、帳簿を見れば、その人や組織がお金を持っているのか、本当に信用できるのかが誰でも判別できるようになった。その結果、信用という概念が確立し、お金の貸し借りが活発になり、経済が急拡大した。
 ただ、その信用は国が公認した仲介人、つまり金融機関や公認会計士がいなければ、成り立たなかった。それに対してブロックチェーンを使えば、金融機関や公認会計士なしに、すべての人と人とが信用によってつながれる。これは社会体制の抜本的な変革といっても過言ではないだろう。
 世界を見渡すとこの信用創造の技術を使って、多様な新しい仕組みが生まれつつある。たとえば「PROOF」は住宅購入のための資金を、仮想通貨のコインである「トークン」を発行することで1ドルから募集できる仕組みだ。
 米国では家をきちんとリフォームすれば住宅の価値が上がるので、トークンを持っている人はキャピタルゲインを得ることも可能。このトークンをギフトとして人に贈ることもできる。
 また「デンタコイン」は患者が歯科医に毎月一定額のトークンを支払うことで、歯科医は定期収入が得られ、患者は定額で多様な治療や指導が受けられるという、画期的な仕組みだ。
 こうしたビジネスが法的な整備を待たずに、次々と立ち上がっている。これらが今後どうなっていくかは、インターネットの行方が誰も予想できなかったのと同様に、誰も予想できない。しかし、確実に言えるのは、これはインターネット革命をはるかに超える真の革命だということである