日経MJ 2018年6月18日掲載

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神田昌典の「未来にモテるマーケティング」隔週月曜日掲載

日経MJ 2018年6月18日掲載

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刺さるビジュアル=守り神―AIの顧客対応で威力

 あなたの会社には「ブランドの守り神」がいるだろうか?
 私のいう「ブランドの守り神」とは、「ビジュアルハンマー」。自社のブランドをひと目で表現する象徴的なビジュアルのことだ。情報が氾濫している現代は、自社のブランドについて長々と説明しても、聞いてもらえない。頭にハンマーでくぎを刺すかのように、ひと目見ただけで脳に突き刺さるビジュアルで伝えることが非常に重要だ。
 コカ・コーラは昔ながらの瓶のボトル、マルボロはカウボーイと脳にこびりつくブランドには必ずビジュアルハンマーがある。
 保険会社のアフラックもビジュアルハンマーで飛躍した例の一つだ。創業45年の時点ではブランド認知度が12%しかなかったが、アヒルのキャラクター「アフラックダック」を導入した途端、1年間で29%も認知度が上昇。13年後の2000年には94%に達した。その威力は絶大だ。
 このビジュアルハンマーが最近、企業から改めて注目を集めている。その理由はチャットボットの急速な普及だ。
 チャットボットとは、ウェブ上で問い合わせをしたお客に対して、AIが24時間365日、自動的に対応するプログラム。この業界のトップランナーである空色(東京・品川)の中嶋洋巳社長によれば、ネットショップにチャットボットを導入すると、平均購買単価が最大250%上がり、リピート率も最大30%上がるという。
 従来は「顧客対応は人間が丁寧にする方が売り上げが上がる」と思われていたが、実は「即座に対応してくれ、気を遣う必要がない」とチャットボットのほうが好まれるというわけだ。
 ただ、チャットボットも100%完璧な応答ができるわけではない。そんなときに役立つのが、じつはビジュアルハンマーだ。アフラックダックのようなブランドを投影したキャラクターが問い合わせに応えると、ボットの受け答えがぎこちなくても、お客は許してくれるという。顧客対応でも、ビジュアルハンマーが「ブランドの守り神」となり、ブランドの毀損を防ぐのである。
 こうしたビジュアルハンマーの重要性を踏まえて、新たなビジネスも生まれている。PR会社のコミューケーションデザイン(東京・港)が提供する、ビジュアルハンマーになるキャラクターを安価にレンタルできるサービスだ。
 NHKアニメの『おしりかじり虫』の制作者として知られるアーティスト、うるまでるびさんが描いた物語のキャラクターたちを、ウェブなどで自由に使える。キャラクターを借りた企業同士が連動することで、ブランドコラボが進みやすくなることも狙っている。
 どの企業も人手不足で悩む中、チャットボットを導入するのは必然の流れ。コミュニケーションの相手が人間からAIに変わるが、その時に子供を夢中にさせたアーティストのキャラクターが少しでも癒やしを提供できれば、日本のおもてなしの形を次のステージへ引き上げられるのではないか――。そう期待している。