日経MJ 2018年5月6日掲載

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神田昌典の「未来にモテるマーケティング」隔週月曜日掲載

日経MJ 2018年5月6日掲載

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新市場誕生前の準備――頭の中の壁、取り払え

 4月27日、南北首脳会談が行われ、核のない朝鮮半島を実現するという「板門店宣言」に両首脳が署名した。「統一コリア」の実現に向けて一歩前進したようにみえる。
 私は、2007年より「日・中・統一コリアの儒教経済圏が生まれる」という仮説を唱えている。「18年には北朝鮮問題は解決」と昨年末に予想した。もちろん国家間の新しい体制構築は簡単にいかない。行きつ戻りつ、政治的には相当な混乱が伴うだろう。
 だが、経済分野では、急速に交流が活発化する可能性がある。
 これは日本企業にとっても、大きな変化といえるかもしれない。仮に北朝鮮問題という喉元に刺さったトゲがなくなるようなことになれば、お隣に突如、7500万人市場が誕生することになる。北東アジア経済圏が飛躍的成長を遂げる可能性がでてくるのだ。
 政治的な問題が解決するのであれば、成長を阻む障壁は意外と少ない。言語の壁もなくなる。クラウド会議サービスに同時通訳機能が実用稼働するのは時間の問題。スマートイヤホンを使い、日本語・中国語・韓国語で問題なく商談ができる日も遠くはあるまい。
 残る壁は頭の中だけだ。突破口となるのは、エンターテインメントだろう。今はジョークにしか聞こえないが「秋元康氏が、北朝鮮の『美女軍団』を日本に招へいし、25年の大阪万博で公演する」という状況を妄想するくらいのほうが、むしろ現実に近いのではないか。大阪万博にあわせて開場する構想があるカジノでも、国籍・言語の違いを超えたアイドル・イベントが定番になるかもしれない。
 このように北東アジア経済圏が成長していく一方で、私たちは深刻な問題に直面する。具体的には差別、貧困、福祉、教育格差の問題が目立ちはじめるだろう。しかし、こうしたネガティブな側面も、ビジネスリーダーたちにとっては、未来に向けて事業戦略を練り直すチャンスを与えられたとも考えられる。
 この機会に社会問題を創造的に解決するビジネスを生み出すことは世界的潮流にも合致する。国連はSDGs(持続可能な開発目標)として、多様な社会問題の解決を目標に掲げるが、SDGsが重視する分野でインパクトのある事業を、まず国内で立ち上げるのだ。ほどなく北東アジア経済圏でも求められるビジネスになっていくはずだ。
 資金に関しても株式投資型のクラウドファンディングが日本にもできはじめている。海外では当たり前に5億、10億と調達できる状況。北東アジアへの展開を見据えた事業なら全世界から資金が集まるだろう。
 こういうと、「いや、そこまでビジネスを広げるつもりはない……」という経営者も多いだろう。しかし市場が爆発していく過程では、中途半端な道はない。新しい時代に合わせて、自らのビジネスを進化させるか、絶滅するか、二つに一つしかないのである。
 国家の壁、言語の壁の前に、未来にモテるマーケターは、自分の頭の中の壁を取り払わなければならない。頭の中以上にビジネスは成長しないからである。