日経MJ 2018年4月8日掲載

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最先端IT光る北海道東川町―小ささはアドバンテージ

 エストニアは人口約132万人の小国ながら99%の行政サービスがオンラインで完結する世界最先端の電子国家だ。日本にもデジタル技術を活用し、最先端の取り組みに挑む小さな町がある。北海道の東川町だ。
 人口8328人だが、町民の約8割が「東川ユニバーサルカード(HUC)」というIC式ポイントカードを持つ。導入は昨年11月。町の商工会が発行するポイントカードで、これほど普及しているのはまれだ。
 普及したのは、単なるポイントカードを超えた機能を備えているからである。
 小売り、飲食、リフォーム、理・美容、金融機関など、110ほどの加盟店で利用できるが、さらに大きな特徴は町内の施設利用やイベント参加でもポイントがたまることだ。例えば「体育館やプールを有料で利用」「文化センターの講座に参加」など。生活の場面でポイントを貯められる。
 経済産業省や町の補助金を活用し、iPadを用いたシステムを整備したことで、この仕組みができた。
 導入後、カード使用量は5倍になり、経済効果で換算すると半年足らずで2億2千万円。地方の商店街にとって降って湧いたかのような増収も実現したが、HUCの効果はこれで終わらないだろう。ビジネスで相乗効果を発揮できるインフラが整い、さらに多様な展開ができるからだ。
 例えば東川町には町立の日本語学校があるが、その留学生約200人に、月8千円分の奨学金をポイントで提供する。小さな町の経済を活性化する上では、バカにならない額だ。
 ふるさと納税では、寄付した人に商品を贈るほか、観光誘致のために、施設の優待証を発行したり、専用施設に宿泊できたりと多様な特典がある。さらにポイントも贈ることで町を訪れた時に使ってもらえる。
 東川町の至るところで、ポイントをためられ、使える。ちょっと大げさだが、分散型のイオンモールやディズニーランドができたようなものだろう。
 HUC導入を仕掛けたのは前職で外資系医療機器メーカーで財務トップだった定居美徳さん。町おこし協力隊で初めて町を訪れた時、明るく挨拶する小学生にノックアウトされ家族で移住を決意。東川町のCFOに就任し改革を進めた。
 松岡市郎・東川町長の存在も大きい。「予算がない、前例がない、他の自治体がやっていないことを理由にするな。やっていないからチャンスがある」と就任以来、発揮してきた強力なリーダーシップがあったから、定居さんも思い切った挑戦ができたわけだ。
 定居さんは「今後はHUCのインフラを活用し、高齢者や子どもの安全を確保する見守り機能を入れたい。HUCポイントと仮想通貨を連動させて、ICO(新規コイン公開)による資金調達を地方自治体がおこなう先陣が切れれば」と大きな夢を思い描く。
 冒頭のエストニアが世界一になれたのは、国の規模が小さく、スピーディーに最先端技術を導入できたから。東川町も同様だ。いまは、小さいことは最高のアドバンテージ。小さい町や会社だからこそ、できることが無限にある。