日経MJ 2018年1月15日掲載

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神田昌典の「未来にモテるマーケティング」隔週月曜日掲載

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社長が戦う格闘技イベント――闘争心、AI疲れに活

 ビジネスリーダー同士の戦いを観(み)るイベントが、2017年12月20日、パレスホテル東京で開催された。「ビジネスリーダーなら、日々戦いでしょう」と流されてしまうかもしれないが、これはビジネスにおける戦いではない。エグゼクティブによる本格的な格闘技イベント、「QUOTATION」だ。
 K―1実行委員会の全面協力の下、エグゼクティブ同士が10試合、キックボクシングで対戦する。選手にはUTグループの若山陽一社長のような上場企業の代表者も。「明日は株主総会なので、負けるわけにはいかない」とリングにあがる社長もいた。
 チケットは3万5千~10万円するが、リング回りの観戦席は円卓形式になっていて、観客にフルコースディナーがふるまわれる。会場は社員や友人、家族などで埋め尽くされていた。
 私も現地で観戦したが、試合を楽しみながら感じたのはビジネスモデルとしても秀逸だということだ。
 近年、コトラーが「マーケティング4・0」という、顧客の自己実現を支援するマーケティングを提唱したが、まさにこのイベントはその典型だ。エグゼクティブが自己実現できるのはもちろん、応援に来た社員の自己実現も促せる。戦う社長の姿を見れば、挑戦心をかきたてられるからだ。「チャレンジ精神のある社長」をPRすることで会社のブランド価値も高められる。ネットTVで中継されるようになれば、PR効果はさらに上がるだろう。
 こうしたメリットがあるので、参戦する社長たちは、自らスポンサーとして出資し、社員を含めた観客もかき集めてくれる。そのうえ、観客がジムに通い始めることもあるのだから、開催者のメリットも大きい。
 さらに、「QUOTATION」は、時代の潮流も完全につかんでいる。
 AI(人工知能)化の進展で今後は、より人間であることを意識する社会になり、さまざまな変化が生じる。その一つが交流の形だ。不特定多数の人と付き合うよりも「トライブ」という小さな社会、つまり内輪で固まるようになり、内輪向けイベントが増える。
 その潮流を先取りし、社会性のあるビジネスモデルに進化させたのが、この格闘技イベントだ。内輪からの収入だけで回せる仕組みをつくり、収益の一部を寄付する、チャリティーイベントに進化させている。
 また、男女平等が徹底されるなか、その反動として、このような男女の個性が際立つイベントが注目されるようになる。仕事で脳ばかり酷使するなか、肉体の疲労感を感じさせるイベントが求められるようにもなる。こうした時代の流れに、すべてマッチしているのだ。AI疲れが進むなか、18年は同種のイベントがどんどん出てくるだろう。
 試合後、ハグする選手たちを見ると、闘争心を持って真剣に戦ったからこそ生まれる友情があることがリングから伝わってきた。真のつながりを見いだすためにも、ビジネスで勝つためにも、闘争心は欠かせないことを改めて感じる。
 あなたには、18年を勝ち抜く闘争心はあるだろうか?