日経MJ 2017年11月27日掲載

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神田昌典の「未来にモテるマーケティング」隔週月曜日掲載

日経MJ 2017年11月27日掲載

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仮想ライブ「SHOWROOM」――夢こそ豊かさ作る

 未来にモテるビジネスづくりを加速するために、最適な方法がある。それは、30歳の前田裕二氏が率いる企業、SHOWROOMを研究することだ。
 このビジネスモデルを一言でいえば、タレントがトークショーや演奏をする「仮想ライブ空間」なのだが、このプラットフォームが画期的だ。SHOWROOMでライブを配信すれば、どんな人にも、ファンがつき始めるというのだ。
 普通に考えれば、無名の人がネットで生放送しても、観客は集まらない。しかしSHOWROOMでは、ふらりと立ち寄る観客数が多くなるよう緻密に設計している。一例を挙げれば「星」と呼ばれるアイテム。ユーザーは会員登録すると「星」と呼ばれる応援票がもらえる。長く視聴したり、ライブをツイートしたりすると、ポイントのように多くの星がもらえる。観客はこの星を応援する演者に贈るが、余った星を使うため、観客自ら新人タレントを探し回ってくれる。
 では、ファンがついた後には、どう収益をあげるのか? その答えもやはり「星」にある。星を贈る行為は、ギフティングと呼ばれ、無料のものだけでなく、有料のものがある。観客はファンになると、演者に自分の存在をアピールするため、有料アイテムに課金し始める。ユーチューブのように広告費ではなく、ファンによるおひねりで成り立っているのだ。
 「でも、有料アイテムだけじゃ、食べていけないでしょ?」と思われたなら、それは時代遅れ。
 米国調査会社によればSHOWROOMは、日本の動画配信アプリのなかで、2017年上半期の収益トップになった。登録者は15万人を超え、演者の中には、月1千万円の売り上げを超える配信者も出始めた。
 SHOWROOMは、演者と観客のやりとりのデータを分析した結果、ファンづくりを短期間で行う人材開発モデルを構築。演者に何を、誰に向けて発信すれば、スピーディーにファンを獲得できるのかを的確に指南できるようになった。
 このプラットフォームは、実は前田氏の人生の映し鏡でもある。彼は8歳のとき両親を失い、生きていくため、親戚のお兄さんがくれたギターを片手に、小学5年生から流しの演奏を始めたという。最初は数百円程度だったおひねりも、その後、仮説と検証を繰り返し、ほどなく月15万円稼げるようになった。
 この実体験から学んだ知恵を、デジタル世界に移植しているので、演者からのシステムへの信頼は篤(あつ)い。
 SHOWROOMに15万人もの若者が集う状況をみると、「夢を見続けていたら、食べていけない」という、お説教はもはや懐かしいほど。「夢の中を生きる術を見せ続けなければ、豊かにはなれない」という時代が既に始まっている。
 この30歳の経営者は、エンターテインメントを武器に、機会格差をなくすことがミッションと語る。収益トップに躍り出たアプリの裏では、世界を変える壮大な夢が息づいている。
 さて、あなたのビジネスは、どんな夢を顧客に見続けさせているだろうか?