日経MJ 2017年10月16日掲載

日経MJ個別記事タイトル

日経MJ掲載の記事をご覧いただけます。
神田昌典の「未来にモテるマーケティング」隔週月曜日掲載

日経MJ 2017年10月16日掲載

日経MJ 2017年10月16日掲載

映像制作会社の脱・価格競争―教育×福祉で新事業に

 デジタル広告を始めると、明らかになることがある。それは、オリジナルな強みを持つビジネスモデル以外は、生き残れないということだ。
 試しに、あなたの会社の商品に関連するキーワードを検索してみるといい。目の前には、ライバルの広告が並ぶだろう。その中で、他社と同じような商品を販売していると、価格だけが差別化要因だから、一気に価格が下落する。
 あるサイト制作の分野では、今まで30万円程度が相場だったのに、1社が価格訴求の広告を出し始めたところ、市場価格は20万円、15万円と急落。1か月後には、条件付きだが無料で提供する会社まで現れた。
 あなたが未来にモテたいなら、そんな不毛な戦いから抜け出したほうがいい。その代わりに、異分野と組み合わせて、新しい事業を創造するのだ。
 ブライダル映像制作会社のUKは、年間千本以上のウエディング記念動画制作をするベンチャー企業だ。創業5年で全国展開するほど急成長してきたが、価格プレッシャーには、常に悩まされていた。
 そこで彼らがとった行動は、価格競争に挑むことではない。本業と異分野を組み合わせて、全く新しい価値を生み出したことだ。
 まず手がけた異分野が「教育事業」である。ブライダルのカメラマンが講師となり、写真や動画の撮影教室をスタート。さらには、家にいながら、画像や映像の編集技術が学べるオンライン講座も始めた。
 次に組み合わせたのは、「クラウドオペレートカム事業」だ。結婚式場に数台のカメラを常設し、結婚式を撮影。その動画データを編集スタッフの元にネットで送信する。こうすると、撮影スタッフは会場まで出向く必要がないため、大幅なコスト減が可能になる。
 デジタル時代が進化したために、初めて実現できた事業モデルだが、取り組んでみると、この事業には、思いがけないベネフィットが見つかった。それは、障がい者に新しい仕事を提供できることだった。
 この仕組みなら、障がい者が自宅で作業しても不都合はない。むしろ、ひとつの仕事に時間をかけられるので、より丁寧な作品ができあがることがわかった。
 このように「動画制作事業」×「教育事業」×「福祉事業」という新しい組み合わせにより、誰もが喜ぶ仕事が生まれた。結婚式場は、お得な記念動画を提案できるし、障がい者は、収入が増加。そしてUKは人材採用難を解消できるようになったのだ。
 すでに何人かの障がい者が編集スタッフとして働いているが、思わぬ副次的効果も生まれている。動画を編集しているうちに、気持ちが前向きになり、自分も「結婚したい」という思いを抱き始めるという。
 広告をネット上に手軽に出せるようになった現在、いままでの事業モデルに固執しながら、価格競争に懸命になっても、その先には、崖しかない。
 あなたも自分の業界の殻に閉じ籠もるのではなく、異分野との結婚に、前向きになってみないか? 価格競争の先にはない、幸福な事業が見いだせるはずだ。