日経MJ 2017年10月2日掲載

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日経MJ 2017年10月2日掲載

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SNS全盛、次なるメディアは―「読書会」が社会動かす

 フェイスブックやインスタグラムなどのSNS(交流サイト)が全盛だが、次に来るメディアとは何か、と聞かれたら、あなたはどう答えるだろうか。私は、「コミュニティー・メディアだ」と即答している。
 コミュニティー・メディアとは、ひとつの空間、もしくは時間を共有する人々の集まりで、典型的な例としては、「読書会」が挙げられよう。
 なぜそう思うのか。それは、ネットよりリアルの方が人への影響力があることが明らかになってきているからだ。
 アレックス・ペントランドの『ソーシャル物理学』によると、リアルな世界で交流している友人からのメッセージは、ネット上だけでやり取りする友人のメッセージと比べ、4倍も、行動変革につながるという。
 ただリアルな交流でも、少し顔を合わす程度の関係では弱い。同じ関心事を持つ人とある程度の時間と空間を共有することで、初めて強い影響力が生まれる。
 そんな「時間と空間の共有」ができる場として最も手軽なのが、読書会だ。1冊の本を媒介に対話することで、参加者の「関心」を「欲求」へと効果的に高めていくことができる。
 私が2011年9月に始めた「リード・フォー・アクション(RFA)」ではその効果の実証に取り組んでいる。「本でつながる 力に変える」をテーマにしたこの会は、本をその場で対話しながら読んでいる。開始6年で、年間延べ1万3千人超が参加する、日本最大規模の読書会になった。最近では中国でも、大規模に行われ始めた。
 軌道に乗ると実感したのは、RFAが人の行動に影響を与える「メディア」としての価値を持ち始めたことだ。例えば、分譲開発会社が主催し、「理想の街づくり」をテーマとする読書会を催すと、既存住人とその地域への移住に関心がある人々が集まり、交流が始まる。イベントをきっかけに、開発地域の魅力を発信できるようになる。
 また「新しい働き方」をテーマとする読書会を催すと、転職・移住などのニーズを持つ人々が集まり意見を交換しながら、次のアクションを見いだすようになった。人材会社や移住・交流を促すプロジェクトにとっても、メディアとしての価値を持ち始めている。本をきっかけに人々が集う場は、行動への強い動機づけとなっているわけだ。
 この影響力が注目され、最近は他の組織とのタイアップが進む。企業ではNTTアドバンストテクノロジが社内読書会を実施。そこから社内の新規事業創出の会議が発足。さらに、川崎市の依頼で製造業同士が企業の壁を越え、オープンイノベーション講座を開催するまでに発展している。
 それにしても、読書会を立ち上げて改めて思うのは、読書会、そして本というものの影響力の強さだ。江戸から明治に向かう時に、変革リーダーたちが集い、育つ場となったのは、対話式の読書会だったが、それは過去の遺物ではない。本離れとはいうものの、時空を超え、人、そして社会を動かすメディアとして、本は依然として大きな影響力を保っている。