日経MJ 2017年6月26日掲載

日経MJ個別記事タイトル

日経MJ掲載の記事をご覧いただけます。
神田昌典の「未来にモテるマーケティング」隔週月曜日掲載

日経MJ 2017年6月26日掲載

日経MJ 2017年6月26日掲載

世界が認めた小さな美容室――海外で成功、規模より技

 世界に挑戦するのが、未来にモテる会社の条件だ。「うちは中小企業だから、世界なんてムリ」という言い訳は、美容室「TICK―TOCK」を知ったとたんに、色褪(あ)せる。
 この美容室は、神戸・姫路に4店舗を構えるのみ。だが、国内外800社と契約し、特許技術を提供。またニューヨークにスタジオを構え、日本発の優れた美容技術を、世界に向けて発信している。
 その技術を、一言で説明すれば「小顔になるカット法」だ。
 「髪を切るだけで、顔が小さくなるなんて…」と首をかしげる人もいるかもしれない。だが、東洋人の平たんな頭の骨格を補正するようにカットすると、髪の量感が立体的になり、その結果、小顔に見えるのだ。
 この美容技術「ステップボーンカット」を開発したのが「TICK―TOCK」オーナーのSAYURIさん。彼女の世界を目指す挑戦は2010年に始まった。まずは、著書「FOR JAPANESE HAIR DRESSERS 日本の美容師たちへ」を発刊。ステップボーンカットを写真で紹介しながら「日本の美容技術は世界最高水準だと自負しなさい」と。日本の美容師を励ます内容だが日本語に加え、英語とフランス語版も用意し、世界6カ国13都市で売った。
 その上で、ステップボーンカットの技法を体系的に学べるスクールを開いた。現役の美容師でも学べるよう、短期集中で受講できる。コースによっては、講師の資格も取れる仕組みだ。
 その結果、日本だけでなく、インドネシアやシンガポール、台湾など、アジア各地のサロンから、「東洋人に合ったステップボーンカットを学びたい」という美容師が日本のスクールへ。ここで学んだ美容師たちは本国で技術を披露し、講師資格を取った美容師が本国で他の美容師を育てていくことで、ステップボーンカットの評判が広がっていったのだ。
 16年には、世界最大規模の美容ショー「インターナショナル・ビューティー・ショー・ニューヨーク」からオファーされ、カットのデモンストレーションなどを実施。その上、ニューヨークに構えたスタジオで、技術を教えるスクールを開くと、ますます、その名が広まっていった。
 ちなみに、ステップボーンカットをするには、専用のはさみやローションが必要なので、カット技術を学んだ美容師たちは、継続的に商品を購入することになる。TICK―TOCKは、スクール事業の収入だけでなく、物販による継続収入までを収益源とする、優れたプラットフォーム型のビジネスモデルなのだ。
 このようなカット技法に限らず、日本には、世界的に見てもプレミアムな技術や商品がまだあるはずだ。
 TICK―TOCKのように、緻密なビジネスモデルをつくればマネタイズが可能になるが、それには、まず、中小企業でも臆せず世界に発信していくことが第一だ。グローバル化が進んだ今、世界との距離を縮められるかは、挑戦する気があなたに、あるかどうか。会社の規模の違いじゃない。