仮想ライブ「SHOWROOM」―日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」11/27号

2017/12/4

未来にモテるビジネスづくりを加速するために、最適な方法がある。
それは、30歳の前田裕二氏が率いる企業、SHOWROOMを研究することだ。

このビジネスモデルを一言でいえば、
タレントがトークショーや演奏をする「仮想ライブ空間」なのだが、
このプラットフォームが画期的だ。

SHOWROOMでライブを配信すれば、
どんな人にも、ファンがつき始めるというのだ。

普通に考えれば、無名の人がネットで生放送しても、観客は集まらない。
しかしSHOWROOMでは、ふらりと立ち寄る観客数が多くなるよう緻密に設計している。

一例を挙げれば「星」と呼ばれるアイテム。

ユーザーは会員登録すると「星」と呼ばれる応援票がもらえる。

長く視聴したり、ライブをツイートしたりすると、
ポイントのように多くの星がもらえる。

観客はこの星を応援する演者に贈るが、
余った星を使うため、観客自ら新人タレントを探し回ってくれる。

では、ファンがついた後には、どう収益をあげるのか? 
その答えもやはり「星」にある。

星を贈る行為は、ギフティングと呼ばれ、
無料のものだけでなく、有料のものがある。

観客はファンになると、演者に自分の存在をアピールするため、
有料アイテムに課金し始める。

ユーチューブのように広告費ではなく、
ファンによるおひねりで成り立っているのだ。

「でも、有料アイテムだけじゃ、食べていけないでしょ?」
と思われたなら、それは時代遅れ。

米国調査会社によればSHOWROOMは、
日本の動画配信アプリのなかで、2017年上半期の収益トップになった。

登録者は15万人を超え、演者の中には、
月1千万円の売り上げを超える配信者も出始めた。

SHOWROOMは、演者と観客のやりとりのデータを分析した結果、
ファンづくりを短期間で行う人材開発モデルを構築。

演者に何を、誰に向けて発信すれば、
スピーディーにファンを獲得できるのかを的確に指南できるようになった。

このプラットフォームは、実は前田氏の人生の映し鏡でもある。
彼は8歳のとき両親を失い、生きていくため、
親戚のお兄さんがくれたギターを片手に、小学5年生から流しの演奏を始めたという。

最初は数百円程度だったおひねりも、その後、仮説と検証を繰り返し、
ほどなく月15万円稼げるようになった。

この実体験から学んだ知恵を、デジタル世界に移植しているので、
演者からのシステムへの信頼は篤(あつ)い。

SHOWROOMに15万人もの若者が集う状況をみると、
「夢を見続けていたら、食べていけない」という、お説教はもはや懐かしいほど。

「夢の中を生きる術を見せ続けなければ、豊かにはなれない」
という時代が既に始まっている。

この30歳の経営者は、エンターテインメントを武器に、
機会格差をなくすことがミッションと語る。

収益トップに躍り出たアプリの裏では、世界を変える壮大な夢が息づいている。

さて、あなたのビジネスは、どんな夢を顧客に見続けさせているだろうか?



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