レビュー重視から抜け出せ ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」10/22号

2018/10/29

レビュー、レビュー、レビュー――。

インターネットで商品や会社を検索すれば、至るところで星マークによる評価が飛び込んでくる。
顧客は商品を購入するとき、自分の判断より他人の判断を重視するようになった。

書店で本を買う時も、昔はページをめくりながら判断していたが、
今はその場でスマートフォン(スマホ)を取り出し、
ネット書店の評価を確認してから買う人も増えている。

レビューの評価が高い商品や店以外は目にもとめてくれない。
一度、低評価がつくと、悪いスパイラルに陥り、挽回は困難だ。

レビューは商品やサービスの売り上げに直結するから
星の数をあげることに注力しなければと思うかもしれないが、
実はもっと効果的なマーケティングのやり方がある。

「評価軸による競争から抜け出すこと」だ。

岡山市内の中心部に、「ナチュレルモン」というレストランがある。
2014年にオープンしたこの店は一見、フランス料理店のよう。

だが、既存カテゴリーにはまらない活動をしているため、
レストランの比較サイトでは、他店と同じ評価軸では評価がつけづらい。

ホームページを訪れると、「ナチュレルモン」と「プレヴナン」という店が並んで紹介されている。
この2店舗は、酒販店を経営していた山本和志さんのワインへのこだわりが高じて、つくられた店だ。

プレヴナンは自然派ワイン専門店で、生産者一人ひとりの顔がみえ、
防腐剤などを極力含まないワインを選び抜いて販売する。
これらのワインは、ナチュレルモンでも味わうことができる。

これだけだと既存店と同じ軸で評価されるが、山本さんはワイングラスまで作ってしまった。

きっかけはおいしいロゼワインを仕入れたが、そのロゼの色に合うグラスがなかったことだ。
そこで地元・岡山の備前焼作家とコラボし、
ロゼワインに似合い、おいしく飲める備前焼のグラス「ろぜ蔵」を作った。

ワインとこだわりのおいしいチーズに合うクラッカーがなかったことから、
日本にはほとんどない、グルテンフリーの米粉のクラッカー「par riz co(パリッ粉)」までも開発。
非常に好評で、店頭で購入できる。

加えて、体にやさしいワインや食物の提供から派生して、地域住民と医療者を対話でつなぎ、
コミュニティーの健康を考えていく「みんくるカフェ」というユニークな活動もしている。

領域を超えた活動をいくつも行うことで、
山本さんの店は他店と同じ軸では測れない魅力を放つようになった。

結果、活動に共感し、レビューの星の数に左右されないコアなファンを多数獲得している。

山本さんのような、領域を超えた活動を重ねることが、評価軸による競争から抜け出す鍵だ。

私は、レビューをあてにする社会は面白くないと考えている。
レビューの評価だけが重視されると、ありきたりのものばかりがあふれる世界になるからだ。

既存の評価軸では評価できない、オリジナルな事業こそが好まれる時代は、目の前にまで来ている。



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