未来と過去の自分に手紙 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」22/11/14号

2022/11/21

ミシェル・オバマ元米大統領夫人が、「#GetHerThere」というキャンペーンを始めた。

世界中の少女たちがその可能性を最大限に発揮できるようにするためのプロジェクトだ。
そのキックオフに、とても面白い取り組みがあったので、ご紹介しよう。

プロジェクトでは、将来の自分に宛てて達成したい夢やゴールをまとめた手紙を書いてもらう。
例えば、カンボジアの高校生が25歳になった自分を想像して次のような手紙を書く。

「あなたの成功を見て、この村の少女たちが、高等教育へと進み、よりよい生活環境で過ごせるようになりました」。
成功した未来の自分を客観視することで、現在、困難に立ち向かう自分自身に希望をもたらすことを狙っている。

こうして「フューチャーセルフ=未来」の自分について考えることは、
一時的にやる気をもたらす以上に大きな変化をもたらす効果が期待できる。

組織心理学者であるベンジャミン・ハーディ博士著の「Be Your Future Self Now」によれば、
ある17歳の青年が6カ月後、1年後、5年後、10年後の自分に向けて話しかけるビデオを撮影。

1年後の自分に向けたビデオは1年後にユーチューブにアップした。結果、その夢をはるかに超えたという。
彼の名はジミー・ドナルドソン。「ミスター・ビースト」として知られる、米国の著名ユーチューバーである。

実は私も、フューチャーセルフを活用した思考プロセスを15年ほど前に方法論化し、実践してきた。
長年のマーケティング経験を棚卸しして分析し、
その背景にある思考プロセスを「フューチャーマッピング」という1枚図にしたものだ。

「自分以外の他者を幸せにする」未来を想定し、そこに至る道筋を考えると、
自分の制約を超えるアイデアを誰でも見いだせる。

今やビジネスだけでなく教育の場でも効果を発揮していて、
探究学習で内発的動機をもたらすプロジェクトに使う事例も増えてきた。

人生100年時代には、過去の延長線上で自分の将来を考えると、見込みが立たず、暗くなるばかりだ。
その上でもフューチャーセルフの考え方は役に立つだろう。

ただ、50代以上の人の場合は、50代、60代、70代の自分に向けて手紙を書くのも効果的だが、
過去の自分に手紙を書くのもおすすめだ。

例えば、25歳の自分に対してアドバイスをする手紙を書く。
「とにかく事業を立ち上げる経験を積め」「勉強をし続けろ」……。

すると50代の自分の中にも25歳の自分がいて、その部分が活性化される。
新しい分野を勉強する意欲が湧いてくるし、子供と同年代の人とスムーズに働けるようになるのである。

若手世代は未来への自分に手紙を送り、ベテラン世代は過去の自分にも手紙を送る。
そうすることで、世代を超える価値あるプロジェクトをいくつも作れるだろう。

2023年は変革に向かう嵐の中でも、すべての世代が世代を超えて、
お互いに希望を発信し続けたといえる1年になれば、と心から願う。

 

 

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