ファントムストックの効能 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」22/8/22号

2022/8/29

東京商工リサーチによると、1億円以上の役員報酬を得た上場企業の役員は、
2022年3月期決算企業で287社、663人と過去最高に達したという。

役員報酬の高額化はプロ意識の高い経営者育成のインセンティブになるメリットがある半面、
格差拡大による社会不安がつきまとう。

先日この問題を解消するアプローチを知り感銘を受けたので、ご紹介しよう。
それは「ファントムストック」

会社の時価総額を計算して、それに応じた業績連動の報酬を支払う仕組みだ。
ストックオプションと異なり、実際に株を提供するわけではないので、「幽霊株式」と呼ばれる。

私がファントムストックを知ったきっかけは、
プライベートエクイティを手がける米KKRの「InvestorDay(投資家の日)」というYou Tube動画を見たことだ。

プライベートエクイティは、会社を買収してリストラなどの合理化を図り、利益率を高め、再び売却するのが仕事である。
対象企業の株主は大きな報酬が得られるが、恩恵が得られるのは、ほんの少数の経営層だけというのが常だった。

それに対して、KKRがあるメーカーに導入したのがファントムストックだ。
業績の向上に応じて、すべての従業員にボーナスを支給した。

金額は1000~4000㌦程度だったが、発表されたとたん、従業員は歓声をあげて立ち上がり、拍手喝采。
感極まり、涙ぐむものもいた。

従業員の多くは時給で働く工場労働者で、貯蓄も余裕もない。
病気になったら最後、生活が立ちゆかなくなる不安の中で生きている。
そうした人たちにとって業績連動の報酬は、これ以上なくありがたかった。

一般社員から契約社員、アルバイトスタッフまで業績連動の報酬を支払うことで、
あらゆる従業員のモチベーションを高め、経営感覚を育てられる。

これが、ファントムストックの長所といえるだろう。

報酬とは「会社は何を重要視しているか」という価値観を従業員にマーケティングするための
最も分かりやすい経営のメッセージである。

私も、報酬に関しては、新たな形の手当や福利厚生にひも付けた社内通貨の発行などさまざまな手を考えたが、
複雑になるほど効果が薄れてしまう。

シンプルに従業員のモチベーションが上がり、経営感覚も持たせられるのがファントムストックだ。

大変面白い仕組みなので、旧来からの取引先にお話ししていたら、
SophiaBlissの最高執行責任者(COO)を務める定居照能さんが、早速、共鳴してくれた。

そして目標管理制度のOKRと組み合わせ、
その実行により生じる付加価値をファントムストックに連動するプロセスを企画書にまとめあげてくれた。

社内のメンバーに見せたところ、満場一致で導入が決定した。

ファントムストックを導入すれば、正社員も契約社員も副業社員もアルバイトスタッフも、
同一労働同一報酬で、経営参画型の組織が実現することが可能だ。

この仕組みを一部の経営者だけにとどめておくのは、もったいない。

 

 

実学M.B.A.
いまなら初月無料でお試しいただけます。
詳しくはこちら



MAIL MAGAZINE・SNS
メルマガ・ソーシャルメディア


メルマガ一覧を見る