ウェルビーイングの経営― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」22/8/8号

2022/8/15

会議に参加するたびに、ある言葉を頻繁に聞くようになった。
それは「ウェルビーイング」だ。

ハッピーが「予想外のお金が入ってきた」「欲しかった車を買った」など、
表面的・瞬間的に「うれしい!」と思う状態を表すのに対して、
ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に満たされた、安定した状態を指す。

なぜ注目されているのかといえば、
コロナ禍によって身体だけでなく精神の健康について今まで以上に関心が高まったから。
またリモートワーク普及によって、孤立する時間が増えたからだろう。

ウェルビーイングは、これからの成長ビジネスをつくるために不可欠な視点だ。
その先駆けというべき法人事例をご紹介しよう。

神奈川県の二宮町に拠点を置く社会福祉法人一燈会だ。
サッカー、フットサルクラブなどを経営する地元の総合型地域スポーツクラブ・湘南ベルマーレと提携し、
「ベルファーム」というプロジェクトを始めた。

ベルファームは障がい者の就労の場として農業をおこなう農福連携プロジェクトである。

地元のブランド野菜である「開成弥一芋」という里芋を耕作放棄地でつくる。
育てられない時期にはなす、きゅうり、にんじんを栽培して販売する。

ベルファームの野菜は利益率が高い。
ベルマーレのサッカー選手などのカードやグッズなどを組み合わせて販売しているからだ。

お客様は野菜を買って地元のクラブを応援できるし、販売側も利益が確保しやすくなり、
プロジェクトを存続できる。

購入するお客様、働き手の障がい者、運営するベルマーレや一燈会。
関わるすべての人や企業がウェルビーイングを高められる取り組みだ。

それが支持され、多少値段が高くても野菜が売れるという。

この取り組みが実現したのは、一燈会がベルマーレと選手支援などで提携したのがきっかけだ。
社会福祉法人と総合型地域スポーツクラブが提携する例は少ないが、
地域の社会課題を解決したい思いが一致し、コラボした。

すると、一燈会の理事長とサッカー・フットサルのサポーターとの交流が生まれた。
そのサポーターから「高齢者だけでなく、障がい者もサポートしたらどうか」と提言されたのである。

これを機に、高齢者福祉と障がい者支援の福福連携をスタート。
さらに、「障がい者の就職先が欲しい」との声が上がり、農福連携も始めたのである。

一燈会だけで農福連携を始めたら、経済的に厳しかっただろう。
しかしスポーツクラブとコラボすることで、ファンからの応援収入が期待できるようになり、
経営が成り立つようになったわけだ。

一燈会の例から分かるのは、
適切なパートナーを見いだすと、ドミノ倒しのように壁が倒れ、難問があっさりと解決すること。
結果、グループ企業全体、地域全体のウェルビーイングが向上することだ。

ウェルビーイング時代の経営は、今、自分がいる領域の壁を自覚し、
それを壊してより広い領域に出るための適切なパートナーを見つけることが欠かせない。

 

 

実学M.B.A.
いまなら初月無料でお試しいただけます。
詳しくはこちら



MAIL MAGAZINE・SNS
メルマガ・ソーシャルメディア


メルマガ一覧を見る