無観客五輪、その先へ ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」21/7/26号

2021/8/19

東京五輪が無観客で開催されることが決まった。

大きな変化が起こるときは、いつもながら賛否がわかれるが、
「未来にモテるマーケッター」にとって大切なのは、無観客か有観客というよりも
その先に何が待っているかだ。

私は、未来へのビジネス潮流に乗り込み、加速するためには、
オリンピックよりも8月24日に開幕するパラリンピックに注目すべきだと考えている。

なぜか。今回のオリパラは歴史上初めての「孤独に観戦するオリンピック」だからだ。
それは心理的なことでなく、単純に技術的なこと。観戦する画面が小さくなるからだ。

今までは大画面テレビの前に家族が集まり、一つの競技を見ていたが、
今回は家族一人ひとりがスマホの小さな画面で、好きな競技だけを眺めるようになるだろう。

スマホの小さな画面で食い入るように見てしまうのは、オリンピックではなく、パラリンピック。
障がいという個性が際立っているからだ。

選手たちがハンディを乗り越え、本気で取り組む姿を見たとき、気づくだろう。

「私たちは、コロナ禍に不平を言うばかりで、大きな夢にチャレンジする情熱を忘れていた」
「かけがえのない命を無駄に使っていた」ということを。

これは、あなたのビジネスに影響するのかといえば、大いに影響する。

パラリンピック選手たちの活躍を目の当たりにすることで、多くの人が大いに刺激を受けるだろう。

そして、出勤などの移動に制約がある場合でも、
リモート社会であれば、優れた能力を生かせる仕事はいくらでも創造できると気づくはずだ。

いまは、映像編集、コピーライティング、プログラミング、デザイン、通信販売など、
自宅で能力を発揮できるような仕事がたくさんある。

例えば公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会アドバイザーの
要職を務める澤邊芳明さんは、車椅子ユーザーである。

18歳のときのバイク事故の影響で、四肢が動かないものの、彼にとってそれは決してバリアではない。

総勢200人近いクリエイティブ集団ワントゥーテンを率い、羽田出島などイベント企画や、
柔道イベントでのプロジェクションマッピング演出など、傑出した作品群を出している。

ご覧になるとわかるが、XR(現実空間とデジタル情報を融合する技術)やAI(人工知能)を駆使し、
映像でここまで表現できるのか、と今までの世界観をひっくり返すような衝撃が続く。

こうした活躍をみる機会が増えれば増えるほど、
障がいがあってもなくても、大いなる可能性に挑戦しようとするだろう。

そうした素晴らしい時代へと空気は変わっていくだろう。

パラリンピックがあるからといって、急に空気が切り替わるわけではなく、
一般に浸透していくのは、数年を要するだろう。

だが、あなたが新たな可能性への挑戦に開始するなら今だ。
その最高の見本となる教師が、パラリンピックに集結している。

 

 

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