加速する食文化の革新 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」21/1/18号

2021/1/25

新型コロナの影響は、食の分野でも大きく出始めた。
例えば、北米では免疫力などをサポートする機能食品として、CBD関連食品の商品点数が爆発的に伸びている。

CBDとは、幻覚成分を排除した大麻を原料としたものだ。

数年前から参入企業が相次ぐ「グリーンラッシュ」が起きていて、
いまやソフトドリンクやコーヒーなどの日用品にも使われ始めた。

2018~19年の1年間で市場投入された商品点数が、北米では88%増加した。
だがアジアはこれからといったところだ。

こうした食に関するグローバルトレンドを、いち早く把握するにはどうしたらよいか?

そのために知っておきたいのが、オランダに本社を構えるイノーバ・マーケット・インサイツ社だ。
同社は全世界に1000人以上のリサーチャーを擁し、過去27年間にわたり、食のビッグデータを築いてきた。

同社のデータベースのデモを見る機会があったがとても実用的だった。
原材料や産地、価格帯、国・地域、機能、味覚・フレーバーなど様々な切り口で瞬時に世界の食品が検索できる。

日本にいながら世界のスーパーマーケットをのぞいているような感覚になる。

指先でグローバル規模での食市場の動向が検索できると、
21年以降の未来で、世界の生活者はどんな食品を求めているのか、水晶玉を見通すように予想できるようになる。

例えば「プラントベース(植物由来)の食品」はその一つだ。

ヴィーガンやベジタリアンだけでなく、健康志向の一般消費者にも普及し、
細胞を培養して肉や乳製品をつくる技術も出てきた。

日本には、豆腐やみそのように、伝統的なプラントベース食品がたくさんあるので、
この流れに乗れば、日本食はさらに広がると期待できる。

「メンタルヘルスに関する食品」の人気も高い。
具体的には記憶力や集中力、睡眠に焦点を当てた食品だ。

コカ・コーラが中国向けに発売したコラーゲンペプチドとGABAを含んだドリンクがその例。

寝る前に飲むと、快適な睡眠や美肌をもたらすとしている。

イノーバ社の田中良介日本カントリーマネジャーによると、
日本には全世界的にヒットする商品の種がたくさんあるという。

例えば「リポビタンD」を日本で見て感激した人がレッドブルを生み出し、世界的な成功を収めたように、
私たち日本人には当たり前だが、世界では珍しいイノベーティブな商品が日本市場には数多く埋もれているというのだ。

あとはどの成分を、どの味覚で打ち出し、どの国から投入すればいいのか、戦略を間違わなければ勝算は十分にある。

同社がこのデータベースを築き始めた理由も、創業者がヤクルトを見たからだという。
多様な商品のデータを集めれば食のイノベーションが加速する、と考えてデータベースを築いたそうだ。

このようにグローバル市場での成功を促す情報資源は、目の前にある。

だが見ようとしないものの前には、何も存在しない。
要は成功は、頭の中にあるのだ。

 

 

実学M.B.A.
いまなら初月無料でお試しいただけます。
詳しくはこちら



MAIL MAGAZINE・SNS
メルマガ・ソーシャルメディア


メルマガ一覧を見る