「AI-Readyな企業」の時代 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/9/21号

2020/9/28

「AI-Readyな社会」とは2018年12月に内閣府が提示したキーワードだ。

医療や金融、保険、交通、エネルギーなどの社会システム全体が、AIの進化に応じて柔軟に変化し対応する。
そんな社会を目指す必要がある、という。

それを踏まえて経団連も「『AI-Readyな企業』を目指すべき」と提言する。
その企業像を具体的にイメージできる人は少ないと思うが、イメージできるようになると背筋が寒くなるかもしれない。

なぜならAI-Readyな企業は、市場を総取りすることになるからだ。

一言でいうとAI-Readyな企業になると、ほとんど売り込みをする必要がなくなる。

ドラッカーは「マーケティングの理想は販売を不要にすることである」と述べたが、
AI-Readyな企業はそれを現実のものにする。

具体的な手法が「ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)」だ。
法人客を対象に、その顧客に合わせて的確にアプローチするマーケティング手法だ。

法人客は個人客とは異なり、一つの会社に複数の決裁者がいる。
従って複数の決裁者を追いかけて、適切なアプローチが必要だ。

そのために複雑に絡み合ったデータを分析・活用することが必要だ。

データは3つに大別される。
(1)見込み客が閲覧したサイトや参加イベント、問い合わせの有無といった「行動データ」。
(2)デジタル技術の活用度や関連予算、役員の構成など企業情報に関する「前行動データ」。
(3)見込み客がイベント参加などの行動を起こした後のアンケートから得られる「後行動データ」だ。

複雑に絡み合うデータを分析・活用することは人力では不可能だ。

だがAIを導入すると、見込み客に自社の商品ニーズが生まれた瞬間に、
ピッタリのタイミングでピッタリの商品をAIが提示してくれる。

アポがとれたら企業に最適なチームが商談に向かい、まとめてくるというわけだ。

このようにAI-Readyな企業だと、顧客ニーズに合った商品と専任チームをAIが指示してくれる。
人間がやるのは意思決定だけだ。

現在の日本企業はクラウド化はほぼ完了したが、ITツールの数だけデータが分かれ、AIを導入しても効果は期待できない。
しかしこれからデータを戦略的に蓄積し、機械学習を始めるAI-Readyな企業はシェアを一気に獲得するだろう。

ただそうした企業が増えると、新たな問題が生まれる。
それは業績や生産性が劇的にアップする一方で、「ほとんどの人がついてこられなくなる」ことだ。

ほんの一部のAI-Readyな個人がAI-Readyの企業を、そして社会を動かすようになる。
その他の残された人は何をすればいいのか?

答えは「何もすることがない」だ。
おそらく田舎暮らしで家庭農園を始めるライフスタイルがはやるだろう。

仕事大好きの私は背筋が寒くなったが、仕事がない状態がユートピアという人にとっては、理想の未来が訪れる。
さてあなたはどちらだろうか?

 

 

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