新規市場創出に「2の効果」 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」2017/6/5号

2017/6/5

「商品を絞り込め!」「顧客を絞り込め!」とは、マーケティングの常とう句だけれど、
正直、絞り込むのは、簡単じゃない。

そこで、提案するのが1つに絞るのではなく、今までつながらなかった2つのものに絞り、
それを組み合わせる。すると、競争のない世界を、あっさりと出現させられることがある。

たとえば、かわいい「アイドル」が、本格的な「メタル」を歌うユニット「ベビーメタル」は
53年ぶりに米ビルボードTOP40にランクイン。
「ペン」と「パイナップル」を組み合わせて歌った「PPAP」も、瞬く間に世界に広がった。

既存市場を奪うには、1つに絞るのが有効だが、新規市場を創るには、2つを組み合わせればいいのだ。

この「2の効果」を体感できるのが、とろさば料理専門店「SABAR」だ。

この店はサバ料理しか出さないにもかかわらず、急成長。
2015年1月の1号店開店から2年間で、全国12店舗、
さらにシンガポール店をオープンと、破竹の勢いで成長している。

「サバ好きって、そんなにいたの?」と突っ込みたくなるが、
その質問はSABARを運営する鯖やの右田孝宣社長には響かない。
なぜなら、サバ好きがどれだけいるかではなく、どれだけサバ好きにさせられるかが問題だからだ。

右田社長の大切な仕事のひとつは、サバへの愛を語ること。だから、やることが徹底している。
社長は光沢感のある青色、すなわちサバ色のジャケットを常に羽織り、
バッグ、その中のペンケースにもサバのイラストが印刷されている。

会社全体もサバ一色。SABARの各店は38席、品数も38と「サバ」で統一。
営業時間は午前11時38分から午後11時38分。
そして自らと社員を、サバの伝道師集団(サバリーマン)と呼ぶ。
つまり朝から晩までサバに夢中なのだ。

「SABARの事例は1つに絞って、うまくいったケースではないのか?」。
そんな反論もあろう。

その通り! だが、まだ言っていないことが、ある。
それはサバとも飲食業とも関係がない。
その1つを加えた結果、鯖やは爆発! 新しい可能性が誕生した。

その2つ目は、何か?
答えはクラウドファンディングだ。SABARが急速に全国展開できた理由――。

それは店舗資金をクラウドファンディングで調達したからだ。
全国38店舗を開くプロジェクトに4千万円以上を集めている。

資金調達ノウハウを身につけた鯖やの挑戦は、店舗拡大にとどまらない。
今年3月8日、栃木県小山市と1億1380万円を調達目標とするサバファンドをスタート。
念願のサバ養殖業に着手したのである。

地味な居酒屋が、クラウドファンディングと出合ったとたん、瞬く間に全国に広がり、
さらに漁業にも挑戦。

自社の強みやリソースを2つに絞って合わせてみると、既存市場の枠を超える、
全く新しい事業モデルが生まれることがある。

ひとつに絞るという、固定観念を手放せ! そして2つ目の力を探せ!
「2」という数字は異なる者同士を引き寄せ、未来を創造する力を持つのだ。

 

**********

この記事に登場している企業は神田昌典の次世代マーケティング実践会(*略称The実践会)の会員様です。
The実践会は、ついつい神田が記事にしたくなるような実践を日々されている経営者・経営幹部・地域のリーダーのコミュニティーです。

**********



MAIL MAGAZINE・SNS
メルマガ・ソーシャルメディア


メルマガ一覧を見る